みなさまこんにちは。
『医学部再受験』と『医学部学士編入』
どちらを選択するか?
社会人で医学部受験を考えている多くの方が悩んでいる問題だと思います。
『医学部再受験』はお馴染みだと思うので、ここでは学士編入についてご説明します。
『医学部学士編入』とは
大学を卒業した人(学士号を持つ人)が主に2年生から医学部に編入学する制度です。
医学部学士編入というと以下のようなイメージを持つ人が多いと思います。
「東大・京大卒の人が多い」
「薬剤師など医療関係者でないと合格が難しい」
「倍率が10倍を軽く超えるので頭の良い人でないと合格できない」
「文系は合格するのが極めて困難である」
実際に合格者の中には東大・京大といった旧帝大出身者や、医療系職の方も一定数います。
ネット情報でも、『学士編入 後悔』や『学士編入 やめとけ』といったワードで検索すると数多くの体験談が出てきます。
そんなことを聞くとやっぱり自分には難しいと考える方も多いでしょう。
しかし、ネットの情報を鵜呑みにしてはいけません。
実際の合格者を見てみると、文系出身者や旧帝大以外卒の合格者はたくさんいます。
かくいう私も非医療系出身の文系職で、医学系知識ゼロの状態から1年で医学部合格を果たしました。
『医学部学士編入』は再受験を考えている受験生の選択肢の一つになり得るのです。
中には再受験と学士編入のダブル受験をする人もいます。
悩んでいる人はぜひこの記事を見て検討してください。
再受験より編入が簡単な理由
私個人的には、大学受験からの期間が過ぎれば過ぎるほど再受験より学士編入向きだと考えています。
それは、大学受験の知識が年月を経るごとにどんどん薄れてしまうからです。
学士編入を躊躇う方向けに、いかに再受験よりハードルが低いのかをお伝えします。
受験者層の違い
再受験は現役高校生や浪人生などが受験します。
彼らは四六時中勉強して全力で受験に臨んでくるため、かなりの強敵です。
再受験者は大学や仕事などの合間を縫って勉強するため、勉強時間の点で不利です。
また、ブランクがあるほど学力を取り戻すまでに時間がかかってしまいます。
一方で、学士編入は基本的に一度大学を卒業している人(もしくは最終学年)しか受験資格がありません。
(一部の大学では取得単位数によって大学途中学年でも受験可能です。)
ですから受験生の多くは勉強へのブランクがあります。
また、仕事をしていたら勉強時間を確保することも難しいです。
そういったことから、学士編入は一般受験に比べてライバルとなる受験生の学力レベルが低いです。
受験大学数の違い
再受験では国立大学1校、その他私立大学を受験できます。
一方で、学士編入は各大学受験日が異なるので複数大学を受験可能です。
またセンター試験もないので大学ごとに0からテストの点数を比較されます。
(一部の大学ではTOEICなどの点数が使用されます。)
そういったことから、学士編入では受験チャンスが多いのです。
倍率のマジック
学士編入の倍率は10倍を超える大学が多く、合格は狭き門だと思っている方が多いと思います。
実はこれにはカラクリがあります。
1 記念受験者が多い
先ほども述べましたが、学士編入受験者は仕事をしながら勉強しています。
そのため、入試時に学力が追いついていない人も多いです。
「本番は来年だけど雰囲気を掴むために受験しておこう」と考える人が多いのです。
紙面上は10倍だとしても、蓋を開ければ実際の倍率は2~3倍ということも大いにあります。
2 補欠合格が多い
多くの大学を受験することができるため、学力の高い受験者は複数校から合格が出ます。
第一志望の大学以外は辞退することになるので、その他の大学には補欠合格者が回ってきます。
実際、私は正規合格はできませんでしたが、3校から補欠合格が回ってきました。
学士編入で求められる人材
学士編入では、受験の性質から単純な学力だけでなく面接での評価も重要となります。
それは学士編入制度がそもそも『幅広い視野をもった』研究者や教育者、臨床医を育成することを目標としていることからも言えるでしょう1)。
1) 清原達也ほか, 大阪大学医学部学士編入学制度30年の総括. 医学教育2005, 36(4): 259~264
幅広い視野、言い換えると多くの経験を有し現役生に良い影響を与えることのできる人材ということです。
面接対策はこの記事の最後にまとめているのでご覧ください。
最短合格に向けた受験戦略
では、実際に学士編入に合格するにはどのような勉強を行えば良いでしょうか。
結論は河合塾KALSへの入塾です。お金に余裕のある方はこの方法が最も効率が良いです。
しかし約100万円程度かかるので、現実的に難しい方も多いと思います。
ここでは独学で合格を勝ち取る方法をご説明します。
私が考える最短の合格戦略は「生命科学」と「英語」の2点突破です。
余裕がある方は物理・化学も勉強することをお勧めしますが、最優先はこの2教科だと考えてください。
順番に説明していきます。
「生命科学」
生命科学はほとんど全ての大学で受験科目になっております。
とはいえ独学で勉強するのはかなりハードです。
これが私が河合塾KALSへの入塾を進める理由です。
私も生命科学はKALSでお世話になりました。(回し者ではありません。)
講義ベースで生命科学を1から教えてくれるのでとてもわかりやすいです。
また、模試や過去問閲覧、医学生チューターとの面談等も充実しております。
情報の少ない学士編入業界なので、こういった媒体を利用するのは重要だと考えます。
KALSの話は以上にして、ここでは独学の際におすすめの書籍をご紹介します。
- 「医学部編入への生命科学演習」
河合塾KALSのカリスマ講師である井出冬章先生著の参考書です。
井出先生は何百何千もの合格者を輩出している学士編入界隈の神のような存在となっております。
この参考書は学士編入に必要な問題が余すところなく載っている名著です。
問題演習メインなので、基礎知識がある程度完成してから解いてみることをお勧めします。
下記の「理系総合のための生命科学」で知識をつけてからチャレンジしてみましょう。
- 「理系総合のための生命科学」
こちらも学士編入受験生に人気の一冊です。
各単元ごとに丁寧な説明がされており、基礎知識用の教科書として持っておきたい一冊です。
- 「トートラ人体解剖生理学」
ある地方国公立大学で1年生の指定教科書になっています。
学士編入の問題は基本的に医学部1年生で学ぶ内容なので、この本は受験にぴったりの内容です。
これを理解しておけば入学後も勉強に遅れることはありません。
- 「Essential 細胞生物学」
こちらは辞書的に使用することをお勧めします。
一部の学士編入受験生の間では、この本を完璧に理解しておけば確実に合格できると噂されています。
実際、この分厚い参考書を全部覚えたら合格できるでしょう。
しかし、それは効率が悪いし非現実的です。
ですから、先の3つの参考書をメインで使いながら、わからない箇所の補足として使うのが良いでしょう。
「英語」
文系出身の方などは英語に自信を持っている方も多いのではないでしょうか。
確かにそれは有利ですが、一点気をつけなければなりません。
それは学士編入の入試で要求される英語力は英会話やビジネス英語とは異なるということです。
なぜなら入試では医学系論文が出題され、それを理解した上で解答しなければなりません。
医学英語の知識と論文の文章構成の理解が必要になってくるのです。
勉強の仕方としては、PubMedで NEJMやLancet、Nature、JAMA、Cellなどの有名雑誌の論文を検索して読みましょう。
英語の勉強になることはもちろん、話題の医療トピックに強くなります。
生命科学でそのようなトピックから出題されることもあるので一石二鳥です。
おすすめの参考書は、生命科学と同じく河合塾KALSから出ている参考書です。
こちらも演習メインなので基礎知識が付いてからチャレンジしてみてください。
また、医療系論文では医療用語が頻出です。
そのため、一般的な英単語帳では不足してしまう部分があります。
医療系英単語が載っている参考書で暗記しておきましょう。
面接対策
一次試験の学力に関してはしっかり勉強すれば突破できるでしょう。
しかし面接は人が採点するのでそうはいきません。
大学側は「研究者」として活躍できる人材を求める傾向がありますが、採点者の先生方の好き嫌いも反映されるでしょう。
そのため、自分1人で抱え込まず友人や知り合いに医療関係者がいればその人にアドバイスをもらいましょう。
また、合格者からフィードバックをもらうことも重要です。
合格体験記なども参考になるのでぜひ読んでみてください。
希望者には私が面接対策を行うこともできるのでお気軽にご連絡ください。
今回は面接対策の方法についてざっくり書いていきます。
履歴書を作り込む
面接では履歴書をもとに質問されるので、履歴書の作り込みは必須です。
履歴書の作り方によっては面接での質問を誘導することも可能です。
知り合いに医師や学士編入合格者がいれば添削してもらうと良いでしょう。
親や友達でも良いので、誰かにフィードバックをもらうことは重要です。
理系にはない強みをアピールする
先ほど医学部の教授陣が「研究者」を求めていると話しましたが、それと同様に「良き臨床医」も求めています。
良き臨床医とは、患者さんやご家族、他の医療従事者と良好なコミュニケーションが取れる医師です。
医学部にストレートで合格した学生は、ビジネスマナーや他者との接し方を知らずに医師になる人も多いです。
そのため、患者さんや他の医療スタッフとのコミュニケーションに苦労することがあります。
もしあなたが営業や接客業をしていてクライアントとのお付き合いがあったのであれば、それをアピールしましょう。
また語学力や海外思考であること、地域に根差した仕事をしていたなど、その人によってアピールポイントは様々あります。
自分の強みは何かを考えてみてください。
強みを考える時は、一般受験で入学した同級生にどのような好影響を与えられるかという視点で考えてください。
以上、見てきましたがいかがでしたでしょうか。
学士編入は情報が出回らない分、情報戦に勝つことがかなり有利に働きます。
また、仲間の存在も大きいのでぜひ仲間を見つけて受験を乗り切ってください。
医師として一緒に仕事ができることを楽しみにしています。